23/3/4 ひたちなか市の考古学 弥生中期の墓から出土する玉製品。
田中美零先生。
[ ]はhp制作者のメモです。
[碧玉へきぎょく。酸化鉄などの不純物を含む石英・緑色のもの。
赤色は鉄石英と呼ぶ。緑色凝灰岩・ヒスイは碧玉ではない]
[管玉くだたま。管状の飾装身具の部品、管玉に糸をとおし首飾りなどにする]
●弥生時代の墓は再葬墓・土坑墓・土器棺墓がある。
再葬墓・土葬後白骨化した遺骨を掘り出し壷に納め再埋葬する。
土坑墓・円形や隅丸長方形の坑を掘り埋葬する。
土器棺墓・甕や壷形土器の胴部を棺とし埋葬する。
土坑墓や土器棺墓は全国的な埋葬形態。
再葬墓は弥生時代中期東日本の埋葬形態・弥生時代後期には見られない。
●管玉が出土する遺跡。
茨城県・福島県・栃木県・千葉県の遺跡を調査した。
福島県の会津地方に管玉の出土が多い。
●茨城県。
●差渋遺跡さしぶいせき。ひたちなか市。土坑墓。弥生時代中期後半。
足洗式土器。土坑墓から管玉1点・勾玉・オオツタノハの貝輪が出土。
●柳沢十二所遺跡やなぎさわじゅうにしょいせき。ひたちなか市。
土器棺墓。弥生時代中期後半。足洗式土器。2点の土器が重なるように出土。
下の土器の底から1 点管玉が出土。その他調査区から1 点管玉が出土。
●新堤遺跡にいづつみいせき。ひたちなか市。土器棺墓?。弥生時代中期中葉。
狢I式土器。土坑の近くから管玉1点出土。
●宿尻遺跡しゅくじりいせき。常陸大宮市。再葬墓。弥生時代中期中葉。
15点の土器が口縁を中心に向け出土。
その中心の土坑底面から少し上でまとまって破砕管玉が出土。
●十王堂遺跡じゅうおうどういせき。日立市。土坑墓。弥生時代中期後半。
土坑墓。高さ27cm の壷形土器が潰れ状態で出土。
破砕管玉が小範囲にまとまって出土。
●女方遺跡おざかたいせき。筑西市。再葬墓。弥生時代中期中葉。
38点の管玉が出土。33点が土器内にあった。破砕管玉は7基から 11 点出土。
●福島県
●上ノ内遺跡うえのうちいせき。福島県いわき市。土坑墓・土器棺墓。
弥生時代中期後葉。天神原式土器。土坑墓から管玉13点出土。
土器棺から管玉が連なった 状態で出土。
●宮崎遺跡みやざきいせき。福島県大沼郡金山町。再葬墓。弥生時代中期中葉。
今和泉式土器。20点の破砕管玉が出土。
●油田遺跡あぶらでんいせき。福島県大沼郡美里町。
弥生時代中期前葉に土坑墓から滑石でつくった玉が出土。
弥生時代中期中葉に再葬墓からかなり細い管玉が出土。
●栃木県。
●清六V遺跡(せいろくさんいせき。栃木県下都賀郡野木町。再葬墓。
弥生時代中期中葉。須和田式土器。3基から管玉が出土。破砕管玉2点出土。
●出流原遺跡いずるはらいせき。栃木県佐野市。再葬墓。弥生時代中期中葉。
50点の管玉が出土。4基の土坑から破砕管玉を出土。
第11号土坑で弧状に並んだ土器の中心から破砕管玉が出土。
土器内から6点を確認。顔面付壺形土器も出土。
第6号土坑は4点の破砕管玉が出土。
第23号土坑で3点の管玉・うち2点の破砕管玉が出土。
●千葉県。
●塙台遺跡はなわだいいせき。千葉県香取郡多古町。再葬墓。
弥生時代中期中葉。須和田式土器。10基から40点管玉が出土。
一つの再葬墓には1〜4点だが13点出土した再葬墓があった。
2点の破砕管玉が出土。
●破砕管玉。
弥生時代中期の墓から破砕管玉が出土することがある。
再葬墓遺跡から出土する傾向がある。
茨城県では常陸大宮市宿尻遺跡・泉坂下遺跡・那珂市海後遺跡・
筑西市女方遺跡など9遺跡の再葬墓で管玉が出土している。
宿尻遺跡と女方遺跡で破砕管玉が出土している。
日立市十王堂遺跡の土坑墓で破砕管玉が出土している。
管玉は主に横側から打撃をうけて破砕されている。
打撃の衝撃で生じた割れがある。
長く太い管玉は縦置きで上から打撃を加えたものもある。
一度だけでなく何回か打撃を与えたものもある。細かく割られ出土している。
宿尻遺跡と十王堂遺跡では、土坑底面から少し上で出土している。
土坑に土を被せ少し埋めて破砕管玉を撒いたか。
破砕管玉は福島県で多く出土している。
福島県金山町宮崎遺跡・会津若松市墓料遺跡・南御山遺跡・
石川町鳥内遺跡など再葬墓と考えられる7遺跡で出土している。
破砕がわかる資料が宮崎遺跡から出土している。
土器を埋設した土坑の脇から破砕管玉・独鈷石が出土。
近くに破砕に使用したと考えられる石が出土している。
●管玉破砕の目的。
王には魂が宿っているので、破砕し魂を解放するという説がある。
埋葬時に祭祀が行われていたと推定。
●管玉の穿孔痕。
弥生時代中期の管玉は安山岩やメノウの石針を使用。回転させ孔をあける。
その工程を上下の両側から行う。孔を合流させ管状の孔にする。
穿孔部は回転時にできる横スジや孔の食違いがみられる。
完形の管玉ではその痕跡の観察は難しい。破砕管玉はそれが可能。
宿尻遺跡から出土した管玉では中心で穿孔部分が食い違う。
両側から孔をあけた痕跡・穿孔時にできる横のスジがわかる。
宿尻遺跡の岩製管玉は、孔の食い違いで貫通できない。
残存部にドーナツ状の溝がある。 中心が突出している。
石針では残存部があっても平か中心がわずかに凹む。
石針は中が詰まる穿孔具ではない。
中心に空洞がある管状のものが使用されてできた痕跡と考える。
同じ痕跡は十王堂遺跡の岩製管玉にもある。
管玉は碧玉や緑色凝灰岩が使用されるが流紋岩を使用している。
特殊な穿孔具が使われている。
●これからの課題
破砕管玉が出土する遺跡の管玉の法量調査。
土器型式と合わせた破砕管玉の年代観。
西日本での破砕行為の有無。
どうして管玉の破砕を行ったのか。
01クサギ。