19/12/21 ひたちなか市民大学講座 
第10回
「マヤの南にはどのような人々が住んでいたのか?
−ニカラグアの考古学」
長谷川悦夫先生。
■ニカラグア史概観(スペイン征服から現代まで)
16世紀。スペインによる征服と植民地化。
19世紀。スペインからの独立。
メキシコ帝国・中央アメリカ連邦を経て独立共和国。
19世紀後半〜20世紀前半。自由党と保守党の絶え間ない抗争。
1937年.アナスタシオソモアが大統領就任。
1979年.サンディニスタ革命。
1990年.内線終結。
2006年.総選挙でサンディニスタ党が政権を奪還。

■中間領域とは。
メソアメリカとアンデスの間。
土器と農耕は古い時代に始まっている。
スペイン人到来時まで、部族社会や首長制社会が分布。
国家は出現していなかった。

■スペイン人到来時のニカラグア。
ユト・アステカ語族のニカラオと
オトマンゲ語族のチョロテカ。
ニカラグア太平洋岸の諸遺跡。


■ニカラグア湖周辺の発掘調査(カルガリー大学)
3遺跡の発掘調査を実施。
サンタ・イサベル。
テペタテ。
エル・ラヨ。
オメテペ期がなくなった。
サンタ・イサベルで、オメテペ期の土器と関連するC14年代は、
AD1200年代が下限。
サポア期(後800〜1350)、
オメテペ期(後1350〜1550)
という編年は誤りか?
メソアメリカ的な文化要素。
トウモロコシの不在。
建築は日干しレンガと古舞壁など質素なもの。
石造基壇はない。
黒曜石は少ない。

■マナグア湖畔の考古学調査。
■チラマティーヨ遺跡の発掘調査。
サポア期とオメテペ期の時期差があるはずの土器が、
下層から上層まで混在。
多様な石材の石器、
漁労のための錘おもりに用いたと思われる土器片。

■ラ・パス遺跡の発掘調査。
マウント1の発掘。
西面の発掘で方形基壇が出土。
当該地域では稀なメソアメリカ的文化要素。
周辺の床面で植物圧痕がある焼土が出土。
土器などの生活廃棄物は少ない。
方形基壇が築かれた床面の下にも、さらに古い床面。
不定形の小剥片が多数出土。

埋葬地区の発掘。
マウンド1から東へ100m。
6基の甕棺埋葬墓が出土。
埋葬3の甕棺から
魚の脊椎、ムリーヨ・アップリケ土器・バジェホ多彩色土器の破片。

マウンド近辺以外の試掘調査。
マウンドから最も遠く、
湖岸に近い、試掘坑4から多くの出土品。
動物骨・魚骨・炭化物・灰・焼土が土器片とともに出土。

土器編年の問題。
サポア期とオメテペ期は並行?
真に新しい時代の土器や遺跡はどこにある?

メソアメリカ的文化要素。
トウモロコシの不在とグラナダ地域のセトゥルメントパターン。
アヤラ遺跡の黒曜石出土状況、
メソアメリカ南東部各地の黒曜石。
ラ・バス遺跡のマウンド1が意味するもの。

■メキシコからの移民はきたのか?
移住の時期とその様態。
ニカラグア太平洋岸サポア期〜オメテペ期の物資文化の多様性。
エル・ラト遺跡の遺構1と遺構2、埋葬の連続と饗宴?

■比較文明論的視点から
先スペイン期間アメリカ大陸の民族移動。
ニカラオとチョロテガの特殊性。
何がアステカとインカを分けたのか?
辺境に取り残された人々が成功した開拓者?