「昭和20年、福島県相馬郡」   
大槻チイ 76歳 水戸市在住。

昭和20年8月初め、
福島県相馬郡小高町
太平洋沖合で、
真夜中、
ドカーンという音がし、
窓ガラスが、
ガタガタと音を立て揺れた。
家の者が皆目を覚まし、
外へ出た。
部落の一部の人達が、
月の光で広い道路に集まった。
艦砲射撃だ。
全員で防風林の手前の道を
山の奥へと歩き始めた。
海を見ると、
北からも南からも、
火の玉のような物が尾を引いて飛ぶ。
船の撃ち合いのようだ。
皆が震えた。
山の奥へ行き、
寄り添って居た。