「呆然」  
鈴木かをる 70歳 水戸市在住。

砂浜で一夜を明かし、
家族で自宅を見に行った。
見渡すかぎりの焼け野原、
台所の焼け跡から
焦げたジャガイモを見つけ、
泣きながら食べて空腹をしのいだ。
その後は被災者として
小学校に収容され、
行き先が決まるまで
何百人という人で雑居が続いた。
そしてやっと持ち出した
父の形見の軍刀と軍靴が
寝ている間に何者かに盗まれ、
神も仏もないと嘆く母を見るのが
子供心に本当につらかった。