銅像賛歌 白虎隊酒井峰治
愛犬クマ 早川喜代次
1.
頃は戊辰の中の秋
戸の口原のあの戦いに
四十二名の白虎の隊
鶴城指して退きぬ
2.
その内隊士十九名
飯盛山にたどりつき
早や落城と伏し拝み
ただ従容として華と散る
3.
その他の隊士二十二名
数隊に分かれ山谷を
傷つく友をいたわりて
互いに励ます顔と顔
4.
友と離れた一少年
酒井峰治十六歳は
不動の滝の上に出て
訪ねた滝沢の茸山
5.
この時峰治は悲しみながら
ひそかに自刃を計りしも
村人達に慰められて
農童の姿に衣代え
6.
その番小屋に休憩中
小屋の外なるあの物音は
これぞ愛犬クマのお出迎え
峰治は叫ぶおおクマか
7.
クマは尾をふりワンワンと
歓喜の大声散ちつつ
峰治の胸に飛びかかり
共に涙にむせびあう
8.
待ちうけたるクマの前
峰治が出した握りめし
大喜びの中目もくれず
天を仰いで吠えつづく
9.
これよりクマの道案内
そちこち山道ちどりつつ
天神橋より三の丸明かず口
笹竹高くふりて無事入城
10.
峰治少年よく参加した
白虎士中の合同隊
城の内外から勇ましく
蘢城戦に華と咲く
11.
時は移りていくとせか
北海道旭川の一角に
燦然輝く酪農家こそ
白虎少年酒井の晴れ姿なり
12.
戊辰を去りて百二十五年
旭川令孫酒井峯男の邸
仏壇の中に戊辰戦争実歴談
四千九文字は忽然と現れぬ
P175会津史談第68号