家訓十五ケ条 保科正之
1.大君の義 
一心大切に忠勤に存ずべく 
列国の例をもって自ら処るべからず 
若し二心を懐かば則ち我が子孫にあらず 
面々決して従うべからず

1.武備は怠るべからず 
士を選ぶを本とすべし 
上下の分を乱るべからず

1.兄を敬い弟を愛すべし

1.婦人女子の言、一切聞くべからず

1.主を重んじ、法を畏るべし

1.家中は風儀を励むべし

1.賄を行い、媚を求むべからず

1.面々依怙贔屓すべからず

1.士を選ぶには便辟便佞の者を取るべからず

1.賞罰は家老の外にこれに参加すべからず 
若し位を出ずる者あらばこれを厳格にすべし

1.近侍の者をして人の善悪を告げしむべからず

1.故事は利害をもって道理を枉ぐべからず 
僉議は私意を挟み、人言を拒ぐべからず 
思う所を蔵せず、
もってこれを争うべし 
甚だ相争うといえども我意を介すべからず

1.法を犯す者は宥すべからず

1.社倉は民のためにこれを置く 
永利のためのものなり 
歳饑えれば則ち発出してこれを済うべし 
これを他用すべからず

1.若しその志を失ない 
遊楽を好み驕奢を致し 
士民をしてその所を失わしめば則ち 
何の面目あって封印を戴き
土地を領せんや 
必ず上表蟄居すべし

右十五件の旨堅くこれを相守り、
以往をもって 
同職に申し伝うべきものなり

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