インドのお母さんは、
人とはなにか、生きるとはなにかを、
次のように子どもに教えているそうです。

「インドの神さまが村の人全員をあつめて、
大ごちそうしてくれました。
このごちそうは、みんなで全部たべてほしい、
ただし、ひじを曲げないで食べてほしい、
といわれました。

どうすれば食べられるでしょうか」
ひじを曲げないで食べるとは、
お互いに食べさせあうということです。
だれかと向かいあって自他になって、
初めて人になるのです。

食べさすあうことを、
大きな輪になって、隣の人にだれもが食べさせられたら、
だれもが食べさせ、食べさせられる人になれるのです。

大きな自他生きの輪です。
たのしそうな笑え声が聞こえてくる、自他愛の世界です。
同じひじを曲げないで食べることでも、
上にほうり投げて、口で受けて食べたり、
直接、口を持っていって食べるのは、
自己愛の世界です。

悲しいことに二十世紀は、
自己愛の時代になっていました。


みすゞコスモス わが内なる宇宙  矢崎節夫著 (JULA出版局)より